診療ネッワーク2

大腿骨頭壊死症    酒の飲みすぎも一因

右股関節が痛み歩きにくい


 和夫さん(27)仮名は高校を中退してシンナーを吸ったり、酒を愛飲したりしながら、フリーターとして自由気ままな生活をしてきた。25歳頃から右股関節の痛みが強くなり、歩く時は松葉杖が必要になり、受診した。


 レントゲン検査の結果、右股関節の大腿骨頭壊死症と診断しました。
壊死した部分に負担がかかると、関節軟骨が陥没して痛みを生じていたのです。幸い、大腿骨頭の後方部に健常な骨があったので「回転式骨切術」を行い、健常部を前方に移動することができました。この術は、九州大学整形外科の杉岡洋一教授が考案され、世界的にも普及した手術です。
 和夫さんは2ヶ月間の入院と約4ヶ月間の自宅療養型リハビリにより走行痛もなくなりました。
4年後の現在、和夫さんは生活習慣も改まり、トラックの運転手としてまじめに働いています。
 大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の血管が閉塞して、骨が壊死してつぶれた状態になる病気です。陥没、変形によって歩く時に痛みを感じるようになります。
 原因はまだはっきりしてませんが、危険因子として副腎皮質ホルモンの長期大量の服用、アルコール愛飲などがあげられます。いったん発症すると、骨の修復能力が弱いため少しずつ進行し、多くの場合は何らかの手術が必要になります。最終手段は人工関節ですが、20代から50代の働き盛りに発症する人が多いため、人工関節の耐用性を考えると安易に手術するわけにはいきません。

(平成10年4月10日 中日新聞朝刊 静岡県西部浜松医療センター 整形外科部長紫藤徹郎先生)



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